上場の法則24:07

スタートアップが「攻めるべきグレーゾーン」と「守るべき倫理」

Facebookを運営するメタ社が、詐欺的な広告から年間約2.5兆円の収益を得ているというニュースが話題になっています。全売上の約10%に相当するこの金額をめぐり、プラットフォーマーの責任はどこまで及ぶのかという議論が起きています。スタートアップや成長企業にとっても、事業のグレーゾーンとの向き合い方は避けて通れないテーマです。プラットフォーマーの矜持と経営判断のあり方について考察します。

プラットフォーマーの責任はどこまで及ぶのか

プラットフォーマーは従来「場を提供しているだけ」というスタンスを取ってきました。メルカリでの不正出品やYahoo!オークション初期の問題など、類似のケースは過去にもありました。しかし、問題が起こった際に社会的責任を問われるのは避けられません。広告審査の強化やチェック機能の充実は、プラットフォーマーとしての最低限の義務です。特に金融系や美容系など、消費者の不安や欲求に訴えかける広告は詐欺的な手法が入り込みやすく、法律違反に該当するケースも散見されます。

Winny事件から学ぶ:イノベーションと法の境界線

プラットフォーム提供者の責任を考える上で参考になるのが、かつてのWinny事件です。開発者の金子氏はファイル共有ソフトを個人間の便利な利用のために開発しましたが、著作権侵害に悪用され逮捕されました(最終的に最高裁で無罪確定)。この事件とメタの状況の違いは、ユーザーを向いたイノベーションや民主化的な要素があるかどうかという点にあります。Winnyには賛否両論あり得ますが、詐欺広告による収益については社会にプラスになる側面を見出すのは困難です。

短期利益と長期リスク:経営者が直面するジレンマ

年間2.5兆円という巨額の収益源を手放す判断は容易ではありません。しかし、経営の視点から見ればこの選択は避けられないとされています。目先の利益を優先して問題を放置すれば、大規模な経済的損失につながるリスクがあり、訴訟や賠償請求に発展する可能性もあります。さらに深刻なのは、問題を認識しながら黙認していたという事実が、企業の本質的な信用を失墜させることです。中長期的な企業価値を守るために、優れた経営者はリスクの早期排除を優先します。

グレーゾーンとの向き合い方:法律違反と社会通念の線引き

大企業でもグレーゾーンをくぐり抜けてきた経験を持つ企業は少なくありません。ただし重要な線引きとして、法律違反と「合法だが社会通念上怪しい」ものは全く異なるという点があります。合法の範囲内で事業を展開する場合は、経営者の意思と判断で継続・撤退を決められます。一方、法律違反に該当する行為は規模に関係なく即座にやめるべきです。もし事業を整理する場合は、売却によってキャッシュを確保し、次の事業投資に回すという選択肢も有効です。

パブリックカンパニーとしての倫理観を持つ

ある程度の規模を持つ企業は、上場の有無にかかわらずパブリックカンパニーとしての自覚が求められます。なりすましアカウントや不正勧誘など、プラットフォーム上の問題を放置すればユーザーの信頼は確実に低下し、いずれ大きな問題として顕在化します。社外取締役やガバナンス体制を活用し、こうしたリスクを早期に潰していくことが健全な経営の基盤です。グレーゾーンの扱いに迷ったときこそ、専門家や社外役員に相談し、ガバナンスを整えていくことが将来のIPOや事業成長につながります。

コンプライアンスガバナンスプラットフォームIPO準備企業倫理

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