上場の法則24:09

町工場がIVS優勝!?いま、注目の企業を取材

2025年のIVS京都ローンチパッドで、全国350社の応募の中から見事優勝を果たしたアドバンスコンポジット株式会社。IT系スタートアップが主流のピッチコンテストで、素材メーカーである同社が頂点に立ったことは大きな驚きをもって迎えられました。独自技術「溶湯鍛造法」で世界を変えようとする同社の挑戦に迫ります。

日本の電力問題を解決する革新的素材

夏場の消費電力の約40%はエアコンが占め、オフィスでは50%に達します。そのエアコンの消費電力の約8割を占めるのがコンプレッサーです。従来、コンプレッサーの部品には鉄しか使えず重量は4.6kgでしたが、アドバンスコンポジットが開発した新素材は全ての必要条件を満たしつつ重量を1.6kgと約3分の1に削減。さらに世界的な環境規制により、エアコンの冷媒ガスを環境に良いものへ切り替える必要がありますが、その際の消費電力増加を防げる技術は世界でこの素材だけです。

溶湯鍛造法――10年以上の研究が生んだ唯一無二の技術

アドバンスコンポジットのコア技術「溶湯鍛造法」は、微細な穴の開いた素材Aに溶けた素材Bを高圧で押し込み、AとBが混ざった全く新しい複合素材を生み出す製造方法です。他の混合方法より高精度で、通常では不可能な割合での組み合わせが可能になります。研究には10年以上を費やし、設備を揃えるだけで数十億円が必要。特許も多数保有し、今後数年で100件以上の取得を予定しています。特に金属と他の素材を混ぜ込む技術を事業化しているのは世界で同社のみです。

エアコンだけではない――自動車・F1・放射線遮蔽まで

溶湯鍛造法で生み出せる素材は無数に存在し、応用範囲はエアコンにとどまりません。自動車業界ではEVやハイブリッド車の製造工程で使われ、製造スピードや不良品率の改善に貢献しています。ホンダレーシングとはF1の共同開発も実施。さらに、電力会社からの依頼で鉛よりも軽く無害な放射線遮蔽素材の開発にも成功しており、原子力発電所や医療、宇宙分野への展開も見込まれています。市場規模は既存の鉄・アルミ市場の置き換えだけで少なく見積もっても45兆円と試算されています。

IVS優勝がもたらした変化と今後の展望

同社がIVSに出場した目的は知名度向上でした。素材は製造の上流工程に位置するため知名度を上げにくい分野ですが、優勝により既存取引先の反応が好転し、取引がスムーズになる効果が出ています。メーカーや自治体など多方面からの問い合わせも増加。売上は年間1.5倍から2倍のペースで成長しており、2029年のエアコン環境規制を契機にさらなる爆発的成長を見込んでいます。従業員数も半年で1.5倍に拡大中で、必要なのは「気合いと根性」のある人材とのことです。

ものづくり日本の新たな希望

ITスタートアップが注目される時代に、ものづくりの領域で世界に挑戦するアドバンスコンポジット。古くから存在した溶湯鍛造の技術を、時代のニーズとコストパフォーマンスの改良で実用化した点は、まさに日本らしいイノベーションです。同社は「ユニコーンやデカコーンは目指さない。そのうちなるからどうでもいい。目指すのは世界で一番影響力の強い会社だ」と語っており、その壮大なビジョンに今後も注目が集まります。

IVS京都ものづくりスタートアップ溶湯鍛造法素材イノベーションアドバンスコンポジット

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