上場の法則16:40

460億円!みずほ銀行、UPSIDERを買収!なぜ売れた?買った?

みずほ銀行がフィンテックスタートアップのUPSIDER(アップサイダー)の株式約70%を460億円で取得するという、スタートアップ業界で大きなインパクトを持つM&Aが発表されました。会社全体のバリュエーションは約660億円に達し、3年前のシリーズCから約3倍の評価となっています。両社の狙いとスタートアップが学ぶべきポイントを解説します。

ディール成立の2つのポイント

今回のM&Aが成立した背景には2つの要因があります。1つ目は、バリュエーションがシリーズCの約3倍と既存VCにとって売却しやすい水準だったこと。ダウンラウンドではないため、既存株主も比較的合意しやすい形でまとまりました。2つ目は、事業上のシナジーが事前に確認できていたことです。2023年頃にアップサイダーとみずほはスタートアップ向けデットファンドを共同で立ち上げており、この取り組みが成功していたことで、お互いの相性や仕事の進め方を確認できていました。

アップサイダーの強み――法人カード審査のイノベーション

アップサイダーが提供する法人カードの最大の特徴は、審査ロジックの革新性にあります。従来の法人カード審査は代表者個人の信用に依存していましたが、アップサイダーは法人の取引データやお金の流れ、月末・月中の残高などを連携して審査を行います。これにより、法人としての実態に基づいた与信が可能になり、最大1億円という大きな与信枠も実現しています。この審査ロジックや経理業務のDXに繋がるサービスは、銀行業として取り組めていなかった領域であり、みずほにとって大きな魅力でした。

メガバンクとフィンテックの提携が加速する背景

今回の案件は、メガバンクとフィンテックスタートアップの連携トレンドの一環です。MUFGはバンドルカードのカンムやウェルスナビを買収し、三井住友はSBIグループやマネーフォワードと提携を進めています。過去にはペイディがPayPalに約3,000億円で買収された大型案件もありました。いずれもフィンテック側のノウハウやテクノロジーと、メガバンク側の資金力・既存顧客基盤を組み合わせることで相乗効果を生み出しています。各領域でナンバーワンのポジションを確立していることが、メガバンクに選ばれる条件と言えるでしょう。

経営陣は株を売らず――スイングバイIPOを目指す戦略

今回の70%取得の内訳は、主にVCなど既存株主からの買い取りです。経営陣は約30%を保有したまま売却していないとみられます。これはアップサイダーが「スイングバイIPO」、つまりみずほグループ傘下に入った上で将来的にIPOを目指す戦略を採っているためです。IPO時には1,000億円を超え、数千億円規模のバリュエーションも見込まれるため、経営陣にとっては現時点で売却するインセンティブがありません。

スタートアップが学ぶべきM&Aへの道筋

今回の事例から得られる学びは、いきなりM&Aではなく段階的に関係を構築するアプローチの有効性です。まずジョイントベンチャーやファンドの共同運営など事業提携から始め、お互いの相性を確認した上で資本関係を深めていくという流れは、多くのスタートアップにとって参考になるでしょう。数%の資本提携から持分法適用の20%、さらに連結子会社の50%超と、段階的に踏み込んでいくケースも考えられます。買い手候補との取引が始まったら、しっかりリソースを投入して相性確認を進めることが重要です。

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