📌 主な発見(Key Findings)
①時価総額の中央値
10.3億円
平均は18.4億円だが、上位数社に偏るため実態は中央値が近い。四分位は5.1億円〜21億円。
②約半数が10億円未満
47.8%
182社中87社。TPMは時価総額の形式基準がないため、一般市場では上場が難しい規模の企業が多数を占める。
③100億円超はごく少数
4社 (2.2%)
最大は215.7億円。上位10社で市場全体(3,350.7億円)の約32%を占める。
④PER・PBRは一般市場より低位
PER 9.2倍
PBR中央値1.32倍。流動性が乏しく、値付きも限られるため、 一般市場のマルチプルとの単純比較はできない。
⑤約97%は公募を伴わない上場
96.8%
発行者情報を全社確認したところ、上場時に公募・売出しを行った会社は4社(2.6%)のみ。 TPMの上場は「資金調達の場」としては機能していない。
⑥事業規模は中小企業の平均を大きく上回る
売上高 28.7億円
従業員数の中央値は83人、営業黒字が89%。 時価総額は小さいが、事業そのものは小さくない。
1. 時価総額の分布
TPM上場182社の時価総額をレンジ別に集計しました。最も多いのは5〜10億円のゾーンで、 5億円未満・5〜10億円・10〜20億円の3つのレンジで全体の73.1%を占めます。 一方、50億円以上は11社(6.0%)にとどまります。
| 時価総額レンジ | 社数 | 構成比 | 分布 |
|---|---|---|---|
| 5億円未満 | 39社 | 21.4% | |
| 5〜10億円 | 48社 | 26.4% | |
| 10〜20億円 | 46社 | 25.3% | |
| 20〜30億円 | 20社 | 11.0% | |
| 30〜50億円 | 18社 | 9.9% | |
| 50〜100億円 | 7社 | 3.8% | |
| 100億円以上 | 4社 | 2.2% |
第1四分位(下位25%)
5.1億円
中央値
10.3億円
第3四分位(上位25%)
21億円
上位10%ライン
37.7億円
2. 業種別の時価総額水準
33業種区分別に、時価総額の中央値と社数を集計しました(2社以上の業種のみ掲載)。 社数ではサービス業・情報通信業・不動産業の3業種で全体の61%を占めます。一方、時価総額の水準は業種によって差があり、 資産を抱える不動産業・陸運業が相対的に高く、サービス業・卸売業が低い傾向です。
| 業種 | 社数 | 時価総額 中央値 | 水準 |
|---|---|---|---|
| サービス業 | 46社 | 8.8億円 | |
| 情報・通信業 | 36社 | 9.4億円 | |
| 不動産業 | 29社 | 15億円 | |
| 小売業 | 19社 | 16.5億円 | |
| 卸売業 | 17社 | 8.8億円 | |
| 建設業 | 14社 | 9億円 | |
| 陸運業 | 4社 | 35.8億円 | |
| 電気機器 | 4社 | 9.8億円 | |
| その他金融業 | 3社 | 13.7億円 | |
| 機械 | 2社 | 31.6億円 | |
| 食料品 | 2社 | 18億円 | |
| 保険業 | 2社 | 9.7億円 |
※ 1社のみの業種(証券・化学・金属製品など)は、個社の数値がそのまま業種値となるため除外しています。
3. 上場年別の社数と時価総額水準
現在TPMに在籍する企業を上場年別に分けた集計です。2024年以降の上場が全体の0%を占め、直近数年で急速に社数が増えたことが分かります。 一方で時価総額の中央値は年による大きな傾向差はなく、おおむね10億円前後で推移しています。
| 上場年 | 在籍社数 | 社数分布 | 時価総額 中央値 |
|---|---|---|---|
| 2020年以前 | 139社 | 9.9億円 | |
| 2021年 | 8社 | 21億円 | |
| 2022年 | 13社 | 15億円 | |
| 2023年 | 22社 | 10.9億円 |
※ 上場廃止となった企業は含まれません(現在の在籍社ベース)。2026年は2026年10月3日時点までの上場分。 なお2020年以前の上場日はJPXが一覧を公開していないため、まとめて集計しています。
4. PER・PBR・株式数の実態
PER 中央値
9.2倍
n=158(黒字企業のみ)
PBR 中央値
1.32倍
n=175
発行済株式数 中央値
1,000,000
株
株価 中央値
1,237
円
5. 時価総額 上位10社
参考として、時価総額の上位10社の顔ぶれを掲載します。 1位と10位では約4.1倍の開きがあり、 上位においても水準の差が大きいことが分かります。 なお個社別の時価総額の数値は、元データの二次配布が制限されているため掲載していません (分布・中央値等の集計値は本レポート独自の算出値です)。
| # | コード | 企業名 | 業種 |
|---|---|---|---|
| 1 | 5135 | AIR-U | 情報・通信業 |
| 2 | 490A | センス・トラスト | 不動産業 |
| 3 | 7176 | シンプレクス・ファイナンシャル・ホールディングス | 証券、商品先物取引業 |
| 4 | 9149 | 大友ロジスティクスサービス | 陸運業 |
| 5 | 2990 | アイダ設計 | 不動産業 |
| 6 | 511A | ヴァンガードスミス | サービス業 |
| 7 | 209A | 小野谷機工 | 機械 |
| 8 | 5890 | オフィスバスターズ | 小売業 |
| 9 | 561A | マークスライフ | 不動産業 |
| 10 | 2995 | ジェイレックス・コーポレーション | 不動産業 |
※ 順位の算出はJPX「株価検索」(株式会社QUICK提供)の掲載値(2026年10月3日時点)に基づきます。個社別の金額は非掲載。
6. TPM上場の約97%は「公募を伴わない上場」だった
本調査の過程で、TPMの時価総額を考えるうえで決定的に重要な事実が確認できました。TPMへの上場のほとんどは、公募・売出(資金調達)を伴っていません。 つまり大多数の銘柄には、そもそも「公開価格」が存在しません。
| 上場時の公募・売出 | 社数 | 構成比 |
|---|---|---|
| なし(いわゆるセルフ上場) | 149社 | 96.8% |
| あり | 4社 | 2.6% |
| 記載なし(テクニカル上場) | 1社 | 0.6% |
※ 2021年〜2026年にTPMへ新規上場した154社について、JPX「新規上場会社情報(TOKYO PRO Market)」に 掲載される各社の会社概要資料の「特定投資家向け取得勧誘及び特定投資家向け売付け勧誘の予定」欄を 全件確認して集計(経営戦略センター調べ)。
「公開価格がない」とはどういうことか
公募・売出を伴わない上場では、上場時に提出する書類が「特定証券情報」ではなく「発行者情報」になります。発行者情報には証券情報の部そのものが存在せず、公開価格・売出価格といった価格情報は一切記載されません。 さらに、取引所が売買の基準として付す基準価格も設定されません。
その裏付けとして、これらの銘柄の会社概要資料には例外なく 「本銘柄については、初値決定日までの売買において成行売呼値及び成行買呼値を禁止します」と記載されています。 基準となる値段が存在しないため、成行注文を受け付けられないのです。
例外的に価格が付いた2社 ― 上場時時価総額を独自に算出
現在TPMに上場している186社のうち、上場時に投資家向けの勧誘を伴い、実際に価格が決定された銘柄は2社のみです。 この2社について、上場時の提出書類から確定価格と上場時発行済株式総数を特定し、 上場時時価総額を算出しました。
| 銘柄 | 上場日 | 形態 | 確定価格 | 上場時発行済株式数 | 上場時時価総額 |
|---|---|---|---|---|---|
| 山本通産(385A) | 2025/7/18 | 自己株式の処分 | 2,450円 | 1,795,000株 | 44.0億円 |
| BABY JOB(293A) | 2024/12/19 | 売出しのみ | 950円 | 2,945,580株 | 28.0億円 |
※ 東証提出の特定証券情報・訂正特定証券情報および東証上場部作成の会社概要をもとに経営戦略センターが算出。 価格はいずれも訂正特定証券情報で確定した値(初回の想定公開価格ではありません)。 時価総額は「上場時発行済株式総数」(自己株式を含む)を分母としています。
この2社から読み取れること
- どちらも新株発行を伴っていません。山本通産は自己株式の処分、 BABY JOBは既存株主(VC等)による売出しです。TPM上場では、 価格が付くケースでも「新株を発行して成長資金を調達する」形にはなっていません。
- 2社とも仮条件の下限で価格が決定しています (山本通産:2,450〜2,500円→2,450円、BABY JOB:950〜995円→950円)。 BABY JOBは想定売付け価格1,000円に対して確定950円と下振れし、 売付け株数も324,020株から168,500株へ縮小しました。プロ投資家向け市場での需要の厚みには限りがあります。
- 上場時時価総額は44.0億円と28.0億円。TPM全体の時価総額中央値(10.3億円)と比べれば大きいものの、 一般市場のIPOと比較すれば小規模な水準です。
これがTPMの時価総額を「参考値」にとどめている制度的な理由です
東証グロース等への一般的な上場では、ブックビルディングを通じて機関投資家の需要を積み上げ、 公開価格という形で市場による価格発見が行われます。 一方TPMでは、大半の銘柄で上場時にこの価格発見のプロセスが存在しません。 TPMの時価総額が実態を表しにくいのは、単に「上場後の売買が少ないから」だけではなく、そもそも出発点となる価格が市場で形成されていないからでもあります。 TPM上場を検討する際は、「上場すれば時価総額がつく」という発想ではなく、資金調達や価格形成はTPM本来の目的ではないという前提に立ち、 上場の意義(信用力・知名度の向上、ガバナンス整備、将来の一般市場への布石)を組み立てる必要があります。
7. 時価総額は小さい。しかし事業規模は小さくない
ここまで見てきた時価総額の中央値10.3億円という数字だけを見ると、 TPMは「小さな会社が集まる市場」に見えます。 しかし、上場187社の決算短信と発行者情報の原本から売上高・純資産・従業員数を集計すると、 まったく違う姿が現れます。
売上高 中央値
28.7億円
四分位 12.3〜65.1億円
純資産 中央値
6.5億円
自己資本比率 中央値 30.9%
従業員数 中央値
83人
n=187・就業人員ベース
営業黒字の会社
89%
167社 / 187社
売上高の分布
| 売上高 | 社数 | 構成比 |
|---|---|---|
| 5億円未満 | 15社 | 8% |
| 5〜10億円 | 21社 | 11.2% |
| 10〜30億円 | 59社 | 31.6% |
| 30〜50億円 | 27社 | 14.4% |
| 50〜100億円 | 40社 | 21.4% |
| 100〜300億円 | 23社 | 12.3% |
| 300億円以上 | 2社 | 1.1% |
売上高10〜100億円のゾーンに126社(67.4%)が集中しています。 100億円を超える会社も25社あり、最大は578.6億円です。
従業員数の分布
| 従業員数 | 社数 | 構成比 |
|---|---|---|
| 30人未満 | 29社 | 15.5% |
| 30〜50人 | 25社 | 13.4% |
| 50〜100人 | 49社 | 26.2% |
| 100〜300人 | 62社 | 33.2% |
| 300人以上 | 22社 | 11.8% |
集計対象は就業人員(臨時雇用者・パートタイマーは含まない)。連結の記載がある会社は連結ベース。最大は2,305人で、300人以上の会社も一定数存在します。
売上高が時価総額を上回る会社が157社(84%)
時価総額を売上高で割った倍率(PSR)の中央値は0.34倍、四分位で0.19〜0.69倍。187社中157社が1倍を下回り、年間の売上高よりも会社全体の時価総額のほうが小さい状態にあります。
これは「TPM企業が割安だ」という話ではありません。 セクション6で見たとおりTPM上場の約97%は公募を伴わない上場で、 そもそも需給で価格が決まる場面を経ていません。事業の実態が小さいのではなく、市場が値段をつけていない——PSRの低さは、TPMの時価総額が評価指標として機能しにくいことの裏返しと読むべきです。
8. この数字をどう読むべきか
⚠️ TPMの時価総額は「流通実態を伴わない参考値」です
TOKYO PRO Marketは特定投資家(プロ投資家)のみが売買できる市場で、 売買がまったく成立しない月がある銘柄も少なくありません。 実際、JPXが公表している月間相場表では、TPM銘柄の多くが月間の始値・高値・安値・終値がすべて 「-」(立会取引での値付きなし)となっています。
したがって本レポートの時価総額は、数か月前の約定価格が据え置かれたままという銘柄を 多く含みます。一般市場のように「市場参加者が日々評価した企業価値」ではなく、発行済株式数 × 直近の参照価格という計算結果として読む必要があります。
実務上の使い方としては、個社の水準を云々するのではなく、「TPMという市場に集まっている企業の規模感」を掴むための分布データとして活用いただくのが適切です。
9. 経営者・CFOが押さえるべき3つのポイント
- TPM上場時の時価総額は5〜20億円が現実的なレンジ:中央値10.3億円、四分位が5.1〜21億円。 100億円超は4社(2.2%)にとどまります。 「上場すれば企業価値が跳ね上がる」という期待値の調整が必要です。
- 時価総額の向上を狙うならTPMは通過点:上場年別に見ても時価総額の中央値に明確な上昇傾向はありません。 企業価値の向上を主目的とするなら、市場の選び方を踏まえ、 グロース市場への直接上場やステップアップ上場を前提に設計すべきです。
- TPMの価値は時価総額ではなく信用力と組織づくり:上場費用は一般市場の数分の一(上場費用参照)で、 採用・取引与信・事業承継の観点でのメリットが中心です。 資金調達や創業者利益の観点で選ぶ市場ではない、という前提の共有が社内で必要です。IPOとM&Aの比較もあわせてご検討ください。
どの市場を選ぶべきか迷っている方へ
TOKYO PRO Market、グロース、スタンダード—— 自社の規模・成長段階・目的に対してどの市場が適切か。 準備期間の各フェーズで何をすべきか、必要な体制・費用・チェックリストを網羅した完全ガイドをご用意しています。
IPO準備の完全ガイドを読む📋 調査方法・データの出典
- 調査対象:2026年10月3日時点でTOKYO PRO Marketに上場している 全182社(新規上場・上場廃止を反映)
- 銘柄一覧:JPX「東証上場銘柄一覧」(2026-07-31基準)に、JPX「新規上場会社情報(TOKYO PRO Market)」および上場廃止銘柄一覧を突合して当日時点に補正
- 時価総額・発行済株式数・PER・PBR:JPX「株価検索」(株式会社QUICK提供)の掲載値
- 売上高・利益・純資産・総資産・従業員数:各社の決算短信(直近通期)および東証プロマーケット発行者情報の原本PDFから直接抽出。 連結の開示がある会社は連結ベース、ない会社は単体ベース。 従業員数は就業人員(臨時雇用者・パートタイマーは含まない)。連結の記載がある会社は連結ベース。
- 訂正開示の確認:全187社について、直近通期の決算短信に対する訂正開示の有無を JPX適時開示情報と各社IRの両方で確認しました。訂正があったのは17社、 うち本レポートが扱う数値に影響するものは4社で、 いずれも訂正後の数値を採用しています
- 集計方法:時価総額は億円単位に換算。中央値・四分位は全社の実数から算出。 PER・PBRは値が取得できた銘柄のみを母数とし、n数を各所に明記。 PSR(時価総額÷売上高)は両方の値が得られた187社で算出
- データの信頼度:売上高・利益・純資産・総資産は186社で原本と突合済みです (残る1社は持株会社化の直後で発行者自身の通期決算が存在しないため、 承継元の連結数値を用いています)
- 従業員数の基準日:145社は直近決算期末と同じ基準日ですが、24社は直近期の発行者情報が未公表のため期末より前の基準日、17社は期末より後の基準日の数値です。 中央値・分布はこの時点差を含んだ集計である点にご留意ください
- 更新頻度:月1回(自動更新)
- 制限事項:時価総額はJPXサイト上で1日1回更新される値に基づく集計。TOKYO PRO Marketは売買がきわめて少なく、直近の約定価格が数か月前という銘柄も多いため、流通実態を伴わない参考値。また2020年以前の上場日はJPXが一覧を公開していないため、上場年別集計では「2020年以前」に一括しています
📰 メディア・研究者の方へ
本レポートの集計結果・グラフ・考察は、出典明記の上で引用いただけます。 ただし、元データである個社別の時価総額・株価はJPX「株価検索」(株式会社QUICK提供)に帰属し、二次配布が制限されています。 個社明細の提供は行っておりませんので、あらかじめご了承ください。
引用例:「経営戦略センター調べ「東京プロマーケット時価総額調査」より」
出典URL: https://ipo-roadmap.jp/research/tpm-market-cap/
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