IPOの基礎知識

TOKYO PRO Market

TOKYO PRO Market(東京プロマーケット)は、特定投資家(プロ投資家)のみが参加できるプロ向け市場です。J-Adviser制度による柔軟な上場プロセスと、一般市場へのステップアップの足がかりとしての活用が注目されています。

TOKYO PRO Marketとは

TOKYO PRO Market(TPM)は、東京証券取引所が運営するプロ投資家向けの市場です。一般市場(プライム・スタンダード・グロース)とは異なり、特定投資家(プロ投資家)のみが売買に参加できる特別な市場区分であり、東証による直接審査ではなく「J-Adviser」と呼ばれる資格を持つ証券会社等が上場適格性を判断する独自の制度を採用しています。

TOKYO PRO Marketの主な特徴

  • 特定投資家(プロ投資家)のみが売買に参加
  • J-Adviser制度による柔軟な上場プロセス
  • 数値基準(形式基準)が設定されていない
  • 四半期開示義務なし(年2回の開示で可)
  • 内部統制報告書(J-SOX)の提出義務なし

特定投資家(プロ投資家)とは

TOKYO PRO Marketで株式の売買ができるのは、金融商品取引法上の「特定投資家」に限定されます。具体的には以下の投資家が該当します。

分類該当する投資家
常に特定投資家(移行不可)適格機関投資家(証券会社、銀行、保険会社、年金基金等)、国、日本銀行
申出により特定投資家(法人)上場企業、資本金5億円以上の株式会社、特殊法人、外国法人、金融商品取引業者等
申出により特定投資家(個人)純資産3億円以上 かつ 投資性のある金融資産3億円以上 かつ 最初の契約締結から1年経過

流動性に関する留意点

特定投資家に限定されるため、一般市場と比較して流動性は著しく低くなります。個人投資家の大半は参加できないため、市場での活発な売買は期待しにくく、株価形成が限定的になることを理解しておく必要があります。

J-Adviser制度

TOKYO PRO Marketの最大の特徴は、J-Adviser(ジェイアドバイザー)制度です。一般市場では東京証券取引所が直接上場審査を行いますが、TOKYO PRO Marketでは東証が認定したJ-Adviserが審査機能を担います。

J-Adviserの役割

フェーズJ-Adviserの役割
上場前上場適格性の調査・確認、上場申請の推薦、上場準備の指導・助言
上場後適時開示の助言・指導、上場適格性の継続確認、コーポレートガバナンスの助言

主なJ-Adviser一覧

2026年時点で、東証からJ-Adviserとして認定されている機関は合計22社あります。代表的なものは以下のとおりです。最新の正確なリストはJPX公式サイトをご確認ください。

  • フィリップ証券
  • 日本M&Aセンター
  • 宝印刷(TAKARA & COMPANY)
  • Jトラストグローバル証券
  • アイザワ証券
  • 名南M&A
  • SBI証券
  • ジャパンインベストメントアドバイザー
  • 船井総合研究所
  • エイチ・エス証券
  • アイ・アール ジャパン
  • 他、計22社が認定(2026年時点)

上場基準

TOKYO PRO Marketには、一般市場のような数値基準(形式基準)が設定されていません。J-Adviserが以下の観点から総合的に上場適格性を判断します。

審査項目概要
市場の評価を害さないこと事業活動の存在、法令遵守体制、企業行動の健全性
公正かつ忠実な事業の遂行関連当事者取引の適切性、独立性の確保
コーポレート・ガバナンス取締役会の機能、内部管理体制の整備
情報開示の適切性会計処理の適正性、開示体制の整備
反社会的勢力の排除反社会的勢力との関係がないこと

一般市場との比較:開示義務の違い

項目TOKYO PRO Market一般市場
法定開示年1回(特定証券情報・年次)年2回(半期報告書+有価証券報告書)
※2024年4月以降、四半期報告書は廃止
取引所開示(決算短信)年2回(年次・半期)年4回(四半期決算短信)
有価証券報告書提出不要(特定証券情報で代替)提出必要
内部統制報告書提出不要提出必要
会計基準日本基準・IFRS等から選択可日本基準等
監査法人必要必要

ステップアップ活用

近年、TOKYO PRO Marketを一般市場への「ステップアップ」の足がかりとして活用する企業が増加しています。TOKYO PRO Marketに上場しながら上場企業としての運営体制を整備し、その後グロース市場やスタンダード市場への市場変更を目指すアプローチです。

ステップアップのメリット

  • 上場企業としての実績を積みながら体制を段階的に整備できる
  • 「上場企業」の看板を活かした信用力向上、採用力強化
  • 適時開示やIR活動の実務経験を蓄積できる
  • 上場維持コストが一般市場より抑えられる
  • 一般市場への上場審査時に実績として評価される

ステップアップの留意点

  • TOKYO PRO Marketから一般市場への変更は「新規上場」と同等の審査が必要
  • J-SOX対応、四半期開示体制など追加の整備が必要
  • 流通株式基準を満たすための資本政策の再設計が必要
  • ステップアップまでに通常2年から3年程度の期間を要する

ステップアップの成功事例

TOKYO PRO Marketからグロース市場やスタンダード市場にステップアップする企業数は年々増加しています。特に地方の中堅企業や事業承継を機に上場を目指す企業にとって、段階的なアプローチとして有効な選択肢となっています。

TOKYO PRO Marketの上場コスト

費用項目概算金額
J-Adviser費用年間500万円〜1,500万円程度
監査法人費用年間500万円〜1,000万円程度
上場審査料100万円(東証へ)
新規上場料100万円(東証へ)
年間上場料12万円〜96万円(時価総額に応じて変動)

※料金体系は変更されることがあります。最新の正確な数値は東証公式 TOKYO PRO Marketガイドでご確認ください。

TOKYO PRO Marketが適している企業

TOKYO PRO Marketの活用が有効な企業像

  • 将来的に一般市場への上場を視野に入れつつ、段階的に体制を整備したい企業
  • 「上場企業」としてのステータスを活用して信用力・採用力を強化したい企業
  • 事業承継を見据え、株式の流動性を確保したい中堅・中小企業
  • 四半期開示やJ-SOX対応のコスト負担を避けたい企業
  • 地方の優良企業で、まず上場の第一歩を踏み出したい企業
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