IPOの基礎知識

市場区分比較表

東京証券取引所の4つの市場区分(プライム・スタンダード・グロース・TOKYO PRO Market)の上場基準を、形式基準・実質基準・維持基準に分けて一覧で比較します。自社に最適な市場を検討する際の参考資料としてご活用ください。

形式基準(新規上場基準)の比較

形式基準とは、上場審査を受けるために満たすべき数値要件です。以下の表で4市場の基準を横断的に比較できます。

項目プライムスタンダードグロースTPM
株主数800人以上400人以上150人以上基準なし
流通株式数2万単位以上2,000単位以上1,000単位以上基準なし
流通株式時価総額100億円以上10億円以上5億円以上基準なし
流通株式比率35%以上25%以上25%以上基準なし
事業継続年数3年以上3年以上1年以上基準なし
純資産額50億円以上正であること基準なし基準なし
利益の額最近2年間合計25億円以上※最近1年間1億円以上基準なし基準なし

※プライム市場の利益基準は、「最近2年間の利益合計25億円以上」又は「売上高100億円以上かつ時価総額1,000億円以上」のいずれかを満たすこと。

TOKYO PRO Marketの特殊性

TOKYO PRO Marketは数値基準を設けておらず、J-Adviserによる総合的な判断により上場適格性が審査されます。そのため、表中では「基準なし」と記載していますが、上場審査が行われないという意味ではありません。

実質基準(審査項目)の比較

実質基準は、形式基準の数値を満たした上で、企業の内容を定性的に審査する基準です。市場区分によって重視される観点が異なります。

審査項目プライムスタンダードグロースTPM
企業の継続性・収益性安定的収益基盤安定的収益基盤事業計画の合理性事業活動の存在
経営の健全性高水準高水準高水準公正かつ忠実
ガバナンス・内部管理最も高い水準標準的水準成長段階に応じた水準基本的水準
開示の適正性英文開示含む日本語での適正開示成長可能性の開示特定証券情報
事業計画の審査参考程度参考程度最重要審査項目J-Adviserが判断

上場維持基準の比較

上場維持基準は、上場を継続するために常に満たしていなければならない基準です。維持基準を下回った場合、改善期間が設けられますが、期間内に改善できなければ上場廃止となります。

項目プライムスタンダードグロース
株主数800人以上400人以上150人以上
流通株式数2万単位以上2,000単位以上1,000単位以上
流通株式時価総額100億円以上10億円以上5億円以上
流通株式比率35%以上25%以上25%以上
売買代金/売買高1日平均0.2億円以上月平均10単位以上月平均10単位以上
純資産正であること正であること基準なし
時価総額(上場後経過時)--上場5年経過後 100億円以上(2030年3月以降適用/旧基準:10年経過後40億円以上)

維持基準の不適合時の対応

維持基準に適合しなくなった場合、通常1年間の改善期間(猶予期間)が設けられます。改善期間中に基準を回復できない場合、監理銘柄への指定を経て上場廃止となります。市場再編後の経過措置期間中の企業は「適合計画書」に基づく改善が求められています。

ガバナンス・開示要件の比較

市場区分によって求められるコーポレートガバナンスと情報開示の水準が異なります。

項目プライムスタンダードグロースTPM
CGコード適用全原則(プライム向け補充原則を含む)全原則を適用(プライム向け一部補充原則を除く)基本原則のみ適用なし
独立社外取締役1/3以上(過半数推奨)2名以上1名以上規定なし
英文開示義務任意任意任意(英語可)
四半期決算短信年4回年4回年4回年2回(半期のみ)
法定開示
※2024年4月以降、四半期報告書廃止
半期報告書+有価証券報告書半期報告書+有価証券報告書半期報告書+有価証券報告書特定証券情報(年次)
内部統制報告書必要必要必要不要
指名・報酬委員会独立社外取締役を過半数とする委員会の設置を要請補充原則4-10①により、独立社外取締役を主要構成員とする任意委員会の設置を要請任意規定なし
サステナビリティ開示TCFD等での開示任意任意規定なし

上場準備コスト・期間の比較

市場区分によって、上場準備に必要なコストと期間は大きく異なります。以下は一般的な目安です。

項目プライムスタンダードグロースTPM
準備期間3〜5年2〜4年2〜3年1〜2年
上場準備費用
準備期間中の累計概算
1億〜3億円7,000万〜1.5億円5,000万〜1億円2,000万〜5,000万円
上場維持コスト
年間あたり概算
5,000万〜1億円/年3,000万〜5,000万円/年2,000万〜4,000万円/年1,000万〜2,000万円/年
監査期間直前2期直前2期直前2期直前1期以上

※「上場準備費用」は準備期間(プライム3〜5年、スタンダード2〜4年、グロース2〜3年、TPM1〜2年)の累計の概算。監査法人報酬、主幹事証券引受手数料、印刷会社費用、株式事務代行費用、IPOコンサル費用、上場審査料・新規上場料などを含みます。
※「上場維持コスト」は1年あたりの概算で、監査法人継続費用、年間上場料、IR活動費、TDnet使用料、株式事務代行費用などを含みます。
※いずれも企業の規模、業種、準備状況により大きく異なります。

株価指数への組み入れ

株価指数プライムスタンダードグロース
TOPIX
※2026年4月時点 約1,650銘柄/2026年10月以降の第二段階で対象拡大
対象(流通株式時価総額100億円以上)一部含まれる(旧東証一部から移行した銘柄が中心)
2026年10月以降の第二段階で対象拡大
現状:対象外
2026年10月以降の第二段階で対象化
日経平均株価(日経225)対象(プライム225銘柄)対象外対象外
東証プライム市場指数対象対象外対象外
東証スタンダード市場指数対象外対象対象外
東証グロース市場指数対象外対象外対象
JPX日経インデックス400選定対象選定対象選定対象

TOPIX見直しの動向(2025〜2028年)

TOPIX(東証株価指数)は2022年の市場再編以降、段階的な見直しが進められています。なお、現在のTOPIXには旧東証一部からスタンダード市場へ自主選択で移行した銘柄も含まれており、「TOPIX=プライム市場の指数」というわけではありません。

  • 第一段階(2025年1月完了):旧東証一部出身銘柄のうち、流通株式時価総額100億円未満を除外(約1,700銘柄に減少。2026年4月時点では約1,650銘柄)
  • 第二段階(2026年10月開始):スタンダード市場・グロース市場の銘柄から、流動性基準を満たすものが新規採用対象に。定期入替制を導入(約50銘柄が新規採用見込み)
  • 最終形(2028年7月完了予定):銘柄数1,200程度に絞り込まれる見込み

市場選択の実務的ポイント

比較表の数値だけでなく、以下の観点も含めて市場選択を行うことが重要です。

  • 自社の事業規模と成長ステージに適合しているか
  • ターゲットとする投資家層は誰か
  • 上場維持に必要なコストを継続的に負担できるか
  • 求められるガバナンス水準に対応する人材を確保できるか
  • 将来的な市場変更(ステップアップ)を視野に入れるか
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